【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。



「おはよう、三国」

「ああ、おはよう」

 朝事務所に出勤すると、同僚の繁原(しげはら)がニヤニヤしながら俺に「なあ、あの子彼女?」と話しかけてくる。

「は?」

「ほら、昨日隣歩いてた子。 三国の彼女?」

 うわ、マジかよ……。見られてたのか。

「……ああ、まあな」

 よりにもよって繁原に見られてたとは……。これは最悪だ。
 絶対に繁原だけには知られたくなかったんだが。

「へえ、やっぱり彼女か。だと思った」

「……ちなみに、どこで見た?」 

 俺が渋々そう聞くと、繁原は「歩道橋のところだけど? 二人並んで仲良さそうに歩いてたぞ」と答えた。

「……そうか」

 絵梨沙の書店の近くのあの歩道橋か……。まさか見られるとは思わなかった。
 事務所からは少し離れてたんだけど、これは油断したな。
 
「彼女かわいい系? 美人系?」

 そう聞かれたので「あえてのどっちもかな」と答えると、コーヒーを淹れたマグカップを手にした繁原は「へえ?彼女はかわいくて美人なのか」とニヤニヤしながらコーヒーを飲み始める。

「……なんだよ。ニヤニヤしすぎだろ」

「だってあんなに仕事一筋だった三国に彼女だろ? なんかウケるわー」

「ウケるってなんだよ。失礼だな」

 俺も繁原の後に続いてコーヒーを淹れ、席へ戻る。

「いや、だって三国は恋愛に興味ないのかと思ってたからさ」

 俺のデスクに近寄ってきた繁原は「で? 彼女の写真ないのか?」と聞いてくるから「あっても見せる訳ないだろ」とコーヒーを飲んだ。