「祥太くん、前より笑うようになったんだね」
「ん?」
祥太くんは不思議そうに私を見る。
「昔の祥太くんは、そんなに笑う人じゃなかった気がしたから。……なんていうか、ミステリアスな雰囲気があったし」
「そうか?」
「うん。 なんか昔より笑うようになってる気がする」
私がそう話したら祥太くんは「それは、絵梨沙の前でだけだよ」と私の髪の毛を撫でる。
「えっ……? そ、そう、なの?」
私の前でだけ……。そんな言葉を聞いてしまったら、私はさらに祥太くんを好きになってしまいそうになる。
これ以上祥太くんのことを好きになってしまったら、私の心臓はドキドキとときめきで破裂してしまうのではないかと心配になってしまう。
「そう。本当の俺を知ってるのは、絵梨沙だけだ」
「本当の……祥太くん?」
「そう。俺は弁護士っていう立場的に、常に冷静でいなきゃならないだろ? 弁護士って常に冷静さを求められる仕事だしな。……冷静さを失ったら、俺は弁護士として失格だしな」
私は祥太くんからその話を聞いて、祥太くんの弁護士としての葛藤みたいな何かを感じ取った。
祥太くんが持っている弁護士としての誇りみたいなものを感じて思わず、私は祥太くんを抱き寄せてしまった。
「絵梨沙……?」
「大変だと思うけど、私で良ければいつでも心の拠り所にしてね。……私の存在が祥太くんにとって大切なものになってくれたら、私も嬉しいし」
祥太くんは「ありがとう、絵梨沙」と私をギュッと抱きしめる。



