【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。



「好きになったこと、そのものが理由……?」

 どういう意味だろう……?

「そう。なんで絵梨沙のことを好きになったのかって言われたら、理由は正直に言うとわからないな。……でも一つだけ言えるのは、絵梨沙だから好きになったってことだよ」

「私、だから……?」

 私だから、好きになったか……。

「そう、絵梨沙だから好きになった。 絵梨沙じゃなかったら、好きにはなってなかったと思う」

「……ありがとう、祥太くん」

 祥太くんは立ち止まると、「じゃあさ、俺も聞いていい?」と私を見つめる。

「なに?」

「絵梨沙は、どうして俺のこと好きになってくれたの?」

「私は……気が付いたらいつの間にか、祥太くんのことを目で追ってたんだ。知らず知らずのうちに、目で追うようになってた。 祥太くんが教科書を貸してくれた、あの日から」
  
 講義で使う教科書を忘れてしまった時、隣に座ってた祥太くんが「忘れちゃったの? じゃあ、一緒に見る?」と教科書を貸してくれたことがきっかけで、気が付いたら祥太くんのことを目で追うようになっていた。

 それが恋だと気が付いたのは、少ししてからだった。 目で追い続けていた祥太くんと恋人になることを、当時の私はきっと思ってなかったはずだ。

「教科書か。……あったな、そんなこと」

「うん。初めて目で追う存在になったのが、祥太くんで良かったって今なら思えるよ」

 懐かしい思い出に浸っているうちに、駅に到着してしまったようだ。