「三国くん、おはよう!」
「ああ、おはよう」
大学時代、俺は好きだった女の子がいた。 その子の名前は絵梨沙 同級生の二十歳だ。
絵梨沙はどこか控えめなのに女性らしさがあって、ショートカットがよく似合う女の子だった。
俺はそんな絵梨沙のことがずっと好きだった。
だけど絵梨沙の隣にはいつも智世という女の子がいた。二人はいつも、仲が良さそうだった。
大学二年の五月中頃、俺は外科医である父親から海外へ留学するように命じられた。 将来は父親と同じように外科医になるように父親からは言われているが、俺は医者になるつもりなど全くなかった。
向こうへ留学する前、絵梨沙から好きだと告白された。 その時の俺は、海外へ留学することが決まっていたこともあり、絵梨沙のことが好きだったが絵梨沙のことを傷つけてしまうかもと思い、好意のないフリをした。
なぜか絵梨沙は、俺が智世のことが好きだという勘違いまで起こしていたが。
絵梨沙はこれで諦めるから、俺に抱いてほしいとお願いしてきたのにはビックリした。
しかし智世のことを好きではないとわかると、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「あのさ、三国くん……」
「ん?」
「さっきの話、忘れてくれないかな」
今の話を忘れてほしいと言ってきた時、俺の中には対抗心が溢れ出してきたのだと思う。
「待てよ、絵梨沙」
「え……? 三国くん?」
「あの言葉、なかったことにするつもり?」



