「……良かったね、祥太くん」
祥太くんも緊張が解れたのか「ああ、緊張した……」とホッとしていた。
「三国さん、うちの娘は本当に素直でいい子なの。 三国さんにはもったいないかもしれないけど、絵梨紗のことくれぐれもよろしくお願いしますね」
お母さんは祥太くんの手を握りしめる。
「はい。 ありがとうございます」
「さ、たくさんあるから食べて」
「はい。 いただきます」
祥太くんは我が家の料理を「美味しい」と食べてくれたことが嬉しくて、私まで笑顔になった。
「三国さん、コロッケお好きなのよね?」
「はい。好きです」
「たくさん作ったから、良かったら持って帰ってね」
祥太くんは「ありがとうございます。嬉しいです」とお母さんに微笑む。
「絵梨紗の料理上手は、お母さんから譲り受けたんですね」
「そうかしら? でもこの子、小さい頃から料理してたから、私より料理は上手いかもしれないわね」
「僕、絵梨紗さんの作る料理好きなんです。 得に豚の生姜焼きとか、お味噌汁とかが好きなんです」
「もう、祥太くん! そんなに褒められると照れくさいよ」
でも祥太くんは「だって事実だろ?」と私を見る。
「……ありがとう」
「絵梨紗、三国さんのためにもっと料理頑張らないとだね」
「うん、もっと頑張る」
祥太くんに毎日美味しいものを食べてほしいから、頑張らないと。
「絵梨紗、幸せになってね」
「お母さん、お父さん……ありがとう」
両親は少しだけ泣きそうになっていた。



