俺は繁原のその言葉を聞いて、本当にそうなのでは?と思い始めた。
「……もしそれが本当だとしたら、まずいことになるな」
「ああ、なんとしても新たな証拠を見つけないと……確実にヤツは起訴されることになる」
「この件は、警察には伝えたのか?」
「いや、まだ確証がないから伝える段階じゃないと判断した」
繁原の担当している今回の轢き逃げ事件が、大きく動き出そうとしていた。
「繁原、俺も手伝うよ」
「ありがとう、三国。 念の為検察には可能性を伝えているが……動き出すかどうかは、検察の判断に委ねられるな」
「可能性は少しでも、潰しておいた方がいいに決まってる」
「……そうだな」
俺たちも出来ることから可能性を潰すために動き出したーーー。
✱ ✱ ✱
「悪い、繁原。 今日は早く帰ってもいいか?」
絵梨紗の誕生日当日も轢き逃げ事件のことを調べていたが、絵梨紗との食事のこともあり今日は早く帰宅したいのだ。
「ああ、今日は彼女の誕生日なんだろ? 早く帰ってプロポーズでもしてやれ」
「うるせえ。……後は頼む」
コイツ、ニヤニヤしやがって……。楽しんでるだろ。
「ああ、甘いあまーい夜を過ごしてこい」
「うるせえ」
俺はカバンを持つと「じゃあな、繁原」と事務所を出た。
「とりあえず……指輪は買ったが」
いざプロポーズをするとなると、なんて言うのが正解なのかもわからない。
シンプルに「結婚してください」でいいのか? それとも……もっとロマンチックな言葉を言うべきなのか?



