「っ、すぐに用意するから! もう少し待っててね!」
勢いよく立ち上がって、台所に向かう。
「千夏子ちゃん、ふっかーつ」
「あはは、さっきまで落ち込んでたみたいだけど、元気になったならよかったよ」
「元はといえばお前らのせいだろーが。ちょっとは反省しろよ」
「千夏子さん、俺も手伝いますよ」
「眠いー。寝てるから、ご飯できたら起こしてー」
大広間から色とりどりの賑やかな声が聞こえてくる。
跡取り候補の五人は、それぞれクセが強いし、何を考えているのか、何が好きで嫌いなのか、まだまだ知らないことだってたくさんあるけど……少しずつ、だけど確実に、距離は縮まっている気がするんだ。
――今日はいつも以上に、腕によりをかけて料理を作ろう。
緩んだ顔でそう思いながら、冷蔵庫をあけて食材の確認を始めた。



