「千夏子さん。ツンデレ気取りの面倒くさい男は放っておいて、今度は俺とデートしましょうね」
「おい玲! 誰が面倒くさい男だ!」
今度は玲くんと一哉くんが言い合いを始めてしまった。
でも、何だかんだ言っても、皆仲がいいんだろうな。
だって悪態を吐き合いながらも、その表情はどことなく楽しそうに見える。
「あれ? 皆勢ぞろいしてるじゃん」
賑やかな空気が広がる中、障子戸を開けて大広間に入ってきたのは慎くんだった。
帰ってすぐに自分の部屋に引きこもってしまったから、今日はもう会えないと思っていたのに。
「慎くん、どうしたの?」
「どうしたのって……だって、千夏子が言ったんじゃん」
「私が?」
「うん。俺も一緒に食卓を囲めたら、楽しいだろうなって。千夏子のご飯、食べさせてくれるんじゃないの?」
――慎くん、喫茶店でのあの言葉、ちゃんと覚えていてくれたんだ。



