「だから言っただろ。止めとけって」
「“そうそう、デートに行くなら尊なんて止めて俺とにしとけって”」
「“そうそう、俺だってお前とデートに行きたかったんだからな”」
「……って、誰もそんなこと言ってねぇだろうが! 勝手に副音声つけんの止めろ!」
事の詳細を聞いた一哉くんが呆れ顔でそう言えば、由紀さんと尊さんが声のトーンを高くして言葉を続けた。
一哉くんはキレのいい突っ込みを入れながらぷんすかしている。
「でも、せっかくだし、一哉くんともいつかお出かけしたいなぁ」
「……まぁ、お前がそこまで言うなら、出かけてやってもいいけど」
一哉くんとも、もっと仲良くなれたら嬉しいし。
そう思って提案してみれば、一哉くんはプイッと視線を逸らしながらもうなずいてくれた。
赤髪からのぞく耳がほんのり色づいている。照れているのかもしれない。



