「いえ、あの、違うんです!」
「何が違うのよ! 平然と三股かけてるような女に、由紀は渡せないわ! 由紀、早く行きましょう!」
彼女さんは、由紀さんの腕を掴んでこの場を離れようとする。
だけど由紀さんはこの場に立ち止まったままで、動く気配がない。
「んー、悪いけど、気分じゃなくなったわ。俺はこのまま千夏子ちゃんと遊ぶから」
「っ、何よそれ……」
由紀さんの彼女さんの目に、じわりと涙がにじむ。
かと思ったら、また鋭いまなざしで睨まれてしまう。
「由紀のことは、絶対に渡さないから! 覚悟しておきなさい、この性悪三股女‼」
捨て台詞のようなものを大声で吐き出した彼女さんは、この場を立ち去ってしまった。
「ママー、さんまた女って何?」
「しっ! 見ちゃいけません」
――近くにいたお客さんからの、腫れ物に触れるかのような視線が痛い。



