「由紀さん。私は連れがいるので、これで失礼しますね」
由紀さんに会釈をして、尊さんのもとに戻るべく足を動かそうとした。
「んー? 千夏子ちゃんは、俺のお嫁さんだけど?」
――だけど、聞き捨てならないワードが聞こえてきたものだから、思わず足を止めてしまった。
「はぁ? ちょっと、お嫁さんってどういうこと!? 由紀は独身なんでしょう!?」
「そうですよ! 嘘つかないでください!」
彼女さんに続けて、由紀さんの発言をきっぱりと否定する。
というか、彼女さんに対して何てことを言ってるんだこの人は……!
私の発言にきょとんとした顔をしていた由紀さんは、愉しそうに口角を上げる。
……待って、すっごく嫌な予感がするんだけど。



