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「ワンピース、買っていただいてありがとうございました。可愛すぎて、私に似合うかが問題ですけど……」
「どういたしまして。俺が千夏子ちゃんに似合うと思って選んだんだから、絶対に大丈夫だよ。今度はそのワンピースを着てまたデートしようね」
「はい! あの、私ちょっとお手洗いにいってきますね」
「うん、分かった。俺はそこのベンチで待ってるから」
春らしい淡い色合いのワンピースを買ってくれた尊さんにお礼を言って、トイレに行くために一旦別れる。
休日ということもありトイレは意外と混んでいて、並ぶのに時間がかかってしまった。
早く戻ろうと歩いていたところで、聞きなじみのある声に呼びとめられる。
「あっれぇ? 千夏子ちゃんじゃね?」
甘やかに感じる間延びした声。
そっと視線を後ろに向けてみれば、そこにいたのは、予想通りの人物だった。



