「あ、えっと! それじゃあ一つ欲しいものがあるんですけど、いいですか?」
「うん、何でも言って? 千夏子ちゃんからのおねだり楽しみにしてたんだ」
困惑した表情をしていた一色さんだったけど、私の言葉を聞くと、何故だかホッとした様子で微笑む。
――やっぱり、我儘を期待していたんだ……これは期待に応えないと。
(でも、欲しい物かぁ。そもそも我儘な女性って、デートでどれくらい高価な物をおねだりするんだろう。やっぱりブランド物のバッグとかアクセサリーとか? でも私、ブランド物とかよく分からないし……そもそもそんな高価な物、怖くて普段使いなんてできそうにないしなぁ。いっそ高級車とか絶対に買えそうにないものを挙げて、困らせちゃうとか?)
庶民的なところばかり見せてしまったから、何とかここで我儘な女性であることをアピールして、挽回しておきたい。
何と答えるのが正解なのかと頭を悩ませていれば、手にしていたカゴの重さがなくなった。



