「えー、じゃあ尊が俺をおぶってよ」
「んー、実は俺、今手首を痛めてるんだよね。だから無理かな」
サラッと嘘を吐いた一色さんは、私の背中から慎くんをはがすと、その腕をつかんで引きずっていく。
「それじゃあまずは、慎お目当てのヘッドホンを買いに行こうか。そしたらどこかの店でご飯にしよう。慎はそのまま店で休んでていいからさ。その間に、俺と千夏子ちゃんで買い物に行く。これでどう?」
「んー、いいよ」
「じゃあ、まずは家電コーナーに行こう」
さすが一色さんだ。
桐野江家の跡取り候補たちの中では、由紀さんと同じく一番の年長者なこともあり、これからの流れをスマートに決めてくれた。
慎さんも納得してくれたので、そのまま家電コーナーでお目当てのヘッドホンを購入し、私たちは全国チェーンの喫茶店にやってきた。
お昼にはまだ少し早いこともあって、店内はそこまで混んでいない。



