「はぁ、やっぱり動くのメンドクサイし、通販でポチればよかった」
どうやら慎くんは、想像以上の面倒くさがり屋さんのようだ。
つかまれていた腕がやっと解放されたかと思えば、慎くんは私の背中にへばりついてくる。
「うぇ、ちょ、ちょっと慎くん!?」
「千代子タクシー、しゅっぱーつ」
「いやいや、私の名前は千夏子です! チヨコって誰ですかわざとだよね!? というか、本当に重いんですけど……!」
慎くんの重みがずっしり圧し掛かってくる。もう無理、つぶれそう……。
身体が限界を迎えそうなその時、救世主が現れた。
「いくら千夏子ちゃんとはいえ、慎をおぶって移動するのは無理だと思うよ?」
一色さんだ。
週末ということもあってデパート専用の駐車場が満車だったため、私たちを先に下ろして、鈴木さんと一緒にすぐ近くの立体駐車場まで停めに行ってくれていたんだ。
ちなみに鈴木さんは、近くで時間をつぶして待っているとのことだ。
ただ「いくら千夏子ちゃんとはいえ」という言葉に含みを感じた気もしたんだけど……ううん、この状況から救ってくれるなら、もう何でもいいや。



