週末の土曜日。

今日は一色さんと出掛ける約束をしていた日だ。


部下の一人である鈴木さん(二十六歳のやっぱり強面なお兄さん)の運転で連れてきてもらったのは、桐野江家から車を走らせること四十分程度の場所にある、大型ショッピングモールだ。

本当はもう少し近場にもショッピングモールがあるんだけど、そこは学校の知り合いにばったり会ってしまう可能性が高いから、申し訳なく思いながらも、遠くのお店に行ってもらうことにしたんだ。


車について全然詳しくないからよく分からなかったけど、明らかな高級車に乗せられて、はじめは緊張で胃が痛かった。

だけど美味しいものをごちそうしてくれると言う一色さんに、今の私のテンションは爆上がりです。


――何を食べようかなぁ。

艶々の苺がのったショートケーキがいいかな。それともチョコレートパフェにしようかな。

うーん、甘いものもいいけど、がっつりラーメンもいいかも。


「ねー。俺、もう疲れたんだけど」


脳内が食べ物パラダイスになっていた私だけど、腕をつかまれたことで現実世界に引き戻された。

私の左腕をガッチリとつかんでいる彼――慎くんは、空いているもう片方の手で眠たそうに目をこすっている。