「あれ、怒った? ごめんってぇ。味が最高なのは本当だからさ。これからも作ってほしいなぁ」
チラリと背後を見れば、由紀さんはへらりと笑っている。
反省している感じは全然しないけど……まぁ、私が作るお弁当が全体的に茶色っぽいことは事実だし。
「……もういいですよ。それに、もう少し彩りとかも意識できるように、頑張ってはみます」
「お、マジで? 楽しみにしとくわ」
由紀さんは私の頭をぽんと撫でると、機嫌良さそうに鼻歌をうたいながら台所からいなくなった。
――でも彩りあるお弁当って、何を入れればいいんだろう。
ミニトマトとかパプリカとか?
そうだ、今度プランターでミニトマトの栽培でも始めてみようかな。
由紀さんから受け取った空っぽのお弁当箱を見ながら(……まぁ、こんな毎日も悪くはないかなぁ)って、自分の頬が緩んでいることに気づいた。



