――時は戻って、お昼休みの時間。
入学式の夜のことを思い出していれば、「千夏子」って名前を呼ばれた。
だけど……正直、振り向きたくない。
どうしよう、このまま聞こえないふりをしてもいいだろうか。
「千夏子、呼ばれてる。ものすごいジッと見られてるけど」
だけど朱里ちゃんにまで言われてしまったら、さすがにこれ以上聞こえなかった振りをするのは難しいだろう。
「……何ですか、慎くん」
「あ、やっとこっち向いた。無視するなんてひどいじゃん、千夏子」
今は私の席でお弁当を食べていたんだけど、実は慎くんは、私の後ろの席なんだ。
授業中からお昼休みになってもずっと寝ていたみたいだけど、ようやく目を覚ましたらしい。
そのまま静かに眠っていてくれたらよかったのに……。



