――実は、入学式があった日の夜。
桐野江で夕食を囲んでいる時に、校内ではあまり関わらないようにしたいってことは、五人に伝えてはあるんだよね。
「校内では、できたら他人の振りをしてほしいんですけど……」
「え、何で?」
「何でって、皆さんがモテすぎるからだよ!」
「モテすぎる?」
慎くんは言葉の意味を図りかねているみたいだったけど、その他の皆は、私が言いたいことをすぐに察してくれたらしい。
だけど、わたしの言葉に納得してくれない人もいたわけで。
「え~、どうしよっかなぁ」
「な、何でだめなんですか?」
「だってさぁ、そもそも千夏子ちゃんは、俺らのお嫁さん候補としてきたんだろ? そのために高校も同じにしたのに、わざわざ他人の振りをするっていうのは話が違うんじゃねーの?」
「うっ、それは……」
由紀さんの言うことは、確かに一理ある。
わざわざ高校を同じにしたのも、仲をより深められるようにっていう組長さんからの計らいもあったのだろう。
それは分かるんだけどさ、でも……。



