「で、千夏子は彼らの知り合いなんだよね?」
私の視線の先を追った朱里ちゃんが尋ねてくる。
その表情や声音から感じられるのは、興味と心配の色が半々って感じだろうか。
「うん、実は……」
「あ、待って。別にそこまでくわしく話さなくてもいいからね。誰だって聞かれたくないことの一つや二つはあるものだしさ。ただまぁ、桐野江家の五人の人気ぶりって、中等部の頃から本当にすごかったのよ。家のこともあるから、怖がって遠目から見てるだけって子も多いみたいだけどね」
朱里ちゃんに話を聞いたところ、慎くん以外の四人も跡継ぎ候補として桐野江家に住んでいることはもちろん、桐野江家がヤのつくお仕事をしている家だということも、校内では周知の事実らしい。



