入学式があった日から、すでに三日が経過していた。
お昼休みの教室は、購買でパンを買ってきた生徒やお弁当組の生徒でにぎわっている。
かく言う私も、お弁当を持参している組だ。
「わ、千夏子のお弁当美味しそう! お母さんの手作り?」
「ありがとう。実はこれ、私が作ってるんだ」
「え、そうなの!? 千夏子ってば絶対に良いお嫁さんになるね」
朱里ちゃんに褒めてもらえて嬉しくなったけど、“お嫁さん”というワードには、少しだけドキドキしてしまった。
「千夏子は、部活には入らないの?」
「うん、私はバイトを頑張りたくて。朱里ちゃんはバスケ部なんだよね?」
「そうそう、自分で言うのもなんだけど、私ってばかなり上手い方でさ。期待のエースって言われてるのよ」
「えっ、すごい!」
「ふふん、そうでしょ? 良ければいつか、練習試合でも見にきてよ」
「うん、絶対に行くね!」
おしゃべりを楽しみながらお弁当をつつく。
想像していた楽しい高校生活だ。
だけど、不意に窓の外に視線を向けてみれば、由紀さんが女子生徒に囲まれている姿が見えて――ちょっとだけ気が重くなってしまう。