「ねぇ見て、玲くんがいる」
「えー、本当だ! 相変わらずのかわいい顔~」
「高等部に上がって由紀先輩たちとの関わりが増えるのは嬉しいけどさ、玲くんと会いにくくなっちゃったのは残念だよねぇ」
「わかる~。まぁ敷地は一緒なわけだし、お昼休みに学食にでも行けば、会えるチャンスもあるんじゃない?」
「確かに!」
近くを通った女子生徒たちが、玲くんの後ろ姿を見ながらキャッキャと色めき立っている。
――どうやら玲くんも、かなりの人気者みたいだ。
まぁ、それはそうだよね。容姿が整っているのはもちろん、あんなに優しいんだから。
朝の短い通学時間の中だけでも、桐野江家男子の人気ぶりがよく分かった気がする。
私は(少女漫画に出てくるヒーローみたい)なんて感心しながら、一人で校門をくぐった。
そして、無事に登校した後はつつがなく入学式を終えて、今は教室に移動しているところだ。
私は一年三組になった。
今日は簡単な学校説明があるだけで、一年生は授業がない。
夕方からバイトも入れているし、一旦家に帰ったら昼食と夕食の支度をしておかないと。
これからの予定を考えながら歩いていたら、前を歩いていた黒髪ショートカットの女の子が振り向いた。



