「千夏子さん」
女子たちの熱い視線を一身に集めている集団を後ろから見ていたら、いつの間にか隣に玲くんがいた。
「わ、玲くん! いつの間に……?」
「千夏子さんがいないことに気づいて、戻ってきちゃいました」
玲くんは可愛らしい顔で微笑むと、目の前まで迫っていた校門の方を指さす。
「校門前まで来ましたし、良ければ写真、撮りましょうか?」
「え、どうして写真を?」
「お父さんに送るんじゃないんですか? すみません、朝の会話が聞こえちゃったんです」
――そう言えば、お父さんに写真を送るって約束してたんだっけ。
朝のバタバタもあって、すっかり忘れてた。
「それじゃあ、一枚撮ってもらってもいいかな?」
「はい、もちろんです」
校門前に設置されている入学式の看板の真横に立って、玲くんのスマホで写真を撮ってもらう。



