「由紀~、おはよう!」
「尊くん、今日もカッコいいね!」
学校に近づくにつれ、前を歩く由紀さんと一色さんはたくさんの女の子たちに声を掛けられている。
すごく整った顔立ちをしているし、予想はしていたけど……やっぱりすごくおモテになるらしい。
(だけどそれって、二人に限った話じゃないはずだよね?)
そう思った私は、一緒に歩いていた面々から、不自然にならない程度に距離をとる。
すると、通学中の女子生徒たちのひそひそ声が聞こえてきた。
「見て、一哉くんがいる! あの硬派な感じがいいよねぇ」
「わかる~! 私、実は中等部の時から狙ってたんだよね」
「え、マジで!?」
「まぁね~。高校では同じクラスになれたらなぁ」
「あ、慎くんじゃん! 朝から会えるとかレアじゃない?」
「本当に綺麗な顔してるよねぇ。マジ眼福すぎる」
「わかる。あのミステリアスな感じがたまらないっていうかさぁ。……ってか何でおにぎり食べてるんだろ?」
――す、すごい。
聞こえてくる会話のほとんどが、桐野江家男子の話題だ。



