「っ、本当にすまない。父さんが不甲斐ないばっかりに……」
「……分かったから、顔上げてよ。でも私、そんなヤクザの家の人たちに好きになってもらうことなんて、絶対にできないと思うんだけど……。だって私以外にも、そのお嫁さん候補は何人もいるんだよね?」
「ああ。千夏子以外は名のある家の娘さんらしいな」
「それ、絶対無理なやつじゃん!」
「いや、大丈夫だ。千夏子は世界一可愛いからな!」
「……」
お父さんが親バカ発言をするのはいつものことだけど、今は突っ込む気にもなれない。
というか、そんな世界一可愛い娘が、ヤクザの家に嫁ぐことになるのはいいのだろうか……。
そんな私の心情に気づくことなく、お父さんは自信満々な顔をして胸を張る。



