「いってぇ、何すんだよ一哉」
「朝っぱらから盛ってんじゃねーよ。わいせつ罪で捕まるぞ」
「はいはい、チェリーの一哉くんは、女の生足にも耐性がないもんなぁ」
「はぁ? 大体お前は、全てにおいて言動がだらしなさ過ぎんだよ。少しは節度ってもんを覚えろ」
「出た出た、そう言ってあたかも自分は正しいですって顔して持論ぶつけてくるやつ。うぜぇし、朝っぱらから止めてくんねぇ?」
へらりと笑いながら煽るようなことを言う由紀さんを、一哉くんは苛々した様子で睨みつけている。
二人の間に、剣呑とした空気が充満していくのが分かる。
「千夏子さん、馬鹿は放っておいて、先に行きましょう」
「そうだね。入学式早々遅刻して困るのは千夏子ちゃんだしね」
「え、二人は放っておいて大丈夫なんですか? それに、遅刻して困るのは一哉くんたちも同じでは……あれ、そう言えば慎くんはどうしたんですか?」
もしかして、先に登校しているんだろうか?
疑問を口にしたそのタイミングで、ぺたぺたと足音が聞こえてくる。



