「それじゃあ私は、その桐野江さんの家でしばらく暮らすことになるってこと?」
「あぁ、そういうことになるな。嫁候補の女性は他にもいるらしいが、千夏子は別嬪さんだからな! 絶対気に入られること間違いなしだ!」
「……はぁ」
どうしよう。口から漏れる溜息が止まらない。
娘の了承もなく勝手に話を取り付けてきたお父さんには、文句の一つや二つ言っても足りないくらいだけど……そうは言っていられないくらい、我が家の生活は逼迫している。
それは事実だ。
でも、ヤクザの家にお嫁さん候補として行くだなんて、いくら何でも話が飛躍し過ぎだ。
そんなのフィクションのドラマや漫画の中でしか聞いたことがないし。
あと、普通に怖い。
どうしようかと頭を抱えていれば、お父さんは再び頭を下げる。



