「……泣かされても知らねぇからな」
斜め前に座っている一哉くんが何か言ったのは分かったけど、声が小さすぎて聞き取れなかった。
聞き返そうと思ったけど、目の前に座っていた玲くんが先に口を開く。
「千夏子さん、この卵焼きすごく美味しいです」
「ほんと、千夏子ちゃんは料理上手だよね。良いお嫁さんになると思うよ」
玲くんに続いて、一色さんにも褒められる。
単純な私は、頬を緩ませながらお礼を伝える。
「ありがとうございます。そう言ってもらえると、作りがいがありますね」
「一哉もそう思うよね?」
「は、何で俺に振るんだよ」
「だって一哉、千夏子ちゃんが作り始めてからは、毎食おかわりしてるよね?」
「っ、……だったら何だよ! 美味いんだから仕方ねーだろ!」
一色さんの揶揄いまじりの言葉に、一哉くんは顔を赤くしながら声を荒げた。
どうやら一哉くんにも、私の作った料理は気に入ってもらえているらしい。
「おかわりも作ってあるから、いっぱい食べてね」
「……おう」
視線を逸らした一哉くんが、照れくさそうに頷く。
こうして四人での朝食時間は、和やかに過ぎていったのだった。



