「……今、笑いましたよね? 玲くんに一色さんまで……酷くないですか?」
「す、すみません、千夏子さん」
「ごめんね千夏子ちゃん。でもほら、笑っちゃったお詫びも兼ねて、お兄さんが美味しい物でもご馳走するよ」
美味しい物。
ここ数カ月は節約生活を心がけていたから、ケーキやらパフェなんかの大好きな甘い物もお預けだったのだ。
甘い誘惑に、心が揺らぐ。
「ウチは頼めばいつだって車も出せるから、千夏子ちゃんの行きたい所、どこでも連れて行ってあげられるよ? もちろん欲しいものがあれば……さすがに今すぐ別荘を買うのは無理だけど、大抵のものなら、お兄さんが何でも買ってあげるしね」
一色さんはパチンと綺麗なウィンクを一つ落として「どうかな?」と首を傾げる。
でも、一色さんだってまだ高校生のはずなのに、そのお金はどこから手に入れているんだろう? アルバイトはしていないみたいだし、やっぱり組長さんからお小遣いとしてもらっているのかな? ……大抵のものは何でも買えるような大金を?
ちょっと気になるけど……お家のこともあるしね。そこは聞かないでおきます。



