「お待たせしました。ちょっと失礼しますね」
「は、何すんだよ!? ……って、何だそれ」
服に触れれば、微かに顔を赤らめた院瀬見さんだったけど、私の手の中にあるものを見て、訝しげな顔をする。
「これは氷です。ガーゼでくるんできました。こうやって氷をあてて硬くすると、ガムが綺麗にとれるんですよ」
「……何でんなこと知ってんだよ」
「ウチはその、あまり裕福な暮らしはしていなかったので。何か役に立つかなって、生活の知恵になりそうなことを色々調べていたら、そこに書いてあったんです。他にも、珈琲の粉を排水口に振りかけて流すと臭いが取れるとか、窓ガラスを拭く時に新聞紙を使うと綺麗に仕上がる、とか。役立ちそうなことがいっぱい載ってたんです! 気づいた人はすごいですよねぇ」
ネットや本で拾ったいくつかの情報を伝えれば、院瀬見さんは何とも言えない呆れ顔になった。



