「アイツら、こんなところにガムなんてくっつけやがって。クッソ、とれねぇし……」
院瀬見さんは、蛇口をひねって水を流しながら、手で服をこすっているようだ。
「あ、あの」
声を掛ければ、小さく肩を震わせた院瀬見さんが、勢いよくこちらに振り向く。
目が合ったかと思えば、すぐに逸らされてしまった。
「……何だよ。用がねぇならどっか行け。目障りだ」
「でも、あの……服にガムが付いちゃったんですよね?」
「……だったら何だよ」
「ちょっと待っててください!」
「は? お前何言って……」
私は、困惑顔で私を呼びとめようとしていた院瀬見さんを無視して台所に行き、お目当てのものを手にしてから、急いで脱衣所まで戻った。



