「何なら、今から俺の部屋くる? 千夏子ちゃんとなら、朝っぱらからでも俺は全然オッケーだけど?」
(いやいや、オッケーって、何がオッケーなの!?)
妖艶な笑みを浮かべた由紀さんに、右頬を撫でられる。
内心で(ひぃ、ムリムリムリ……!)と叫んでいれば、由紀さんの手は誰かによってパシリと払い落とされる。
「千夏子さん、こんな奴は無視して大丈夫ですから。早く洗濯物干しちゃいましょう」
間に入ってくれた玲くんは、空いている私の手に洗濯物を渡してくれる。
「おっえー、お前、何イイ子ちゃんぶってんだよ」
「え? いい子ちゃんぶってるって……由紀ってば誰のことを言ってるわけ?」
「千夏子ちゃん、騙されてるって。コイツ猫被ってるだけで、一番頭のイカれてる野郎だから」
玲くんを指さした由紀さんは、あからさまに顔を顰めている。
(玲くんの頭がイカれてる? ……こんなに紳士的で優しい玲くんが?)
由紀さんの言うことが信じられず、私が不思議そうな顔をしていれば、玲くんは「この人、ちょっと妄想癖なところがあるんです。千夏子さんは気にしないでください」とニコニコ笑い、そんな玲くんの眩しい笑みを見て、由紀さんはまた「うえー」と嫌そうな声を出していた。



