【番外編更新中】騙し愛され落とし合い ~借金帳消しのために、××の家でお嫁さん候補としての生活を始めます~



「っ、あの。久美さん」


足を止めて、久美さんの名前を呼ぶ。

このまま別れるのは、わだかまりが残るような気がして嫌だなって思ったから。


「確かに私は、借金のことがなかったら、こうして由紀さんたちと関わることはなかったと思います。でも今は、由紀さんと、皆さんと一緒に過ごす時間が……純粋に楽しいんです」

「えぇ、千夏子ちゃんってばそんなに俺らのことが…「ちょっと黙っとけ」

「なので、久美さんと由紀さんの仲を引き裂いてやろうとか、そんなこと考えてませんでした。それは、分かってもらえたら嬉しいです」


今の私の思いを、正直に伝える。

私の話を黙って聞いてくれた久美さんは「……もう、分かったわよ」と、苦い顔つきでため息を漏らした。


「何だか一気に冷めたわ。もうあなたたちに手を出したりしないから、安心してちょうだい」


そう言う久美さんに小さく頭を下げて、私は由紀さんたちと一緒にカラオケボックスを後にした。


「悪い男には惹かれるけど、これ以上関わって痛い目に遭うのはごめんだわ。……あの子も、ヤバい奴らに捕まっちゃって、災難ね」


――最後に久美さんが呟いていた言葉を、私が耳にすることはなかった。