玲くんって、何て良い子なんだろう。
――そう言えばお父さんは、跡取り候補の男子たちは皆我儘な女性が好みだって言っていたけど、玲くんもそうなのだろうか?
……こんな純粋そうな良い子が? 我儘を言って頼ってもらえるのが嬉しいからとか、そういうことなのかな。
でも、好みの女性を演じてみせるなら、こうして手伝いを申し出てくれた今はチャンスだ。
「……それじゃあ、玲くんがこの洗濯物、全部干してくれる? 私は疲れちゃったから、そこで休んでるね」
「はい、分かりました! 千夏子さんはゆっくり休んでいてください」
「……ごめん、嘘です。全然疲れてなんてないから! 私も一緒にやるね!」
「そう、ですか? 無理はしないでくださいね?」
――無理だ。こんな良い子に仕事を押し付けるなんて、私にはできない。
この作戦は失敗だ。
我儘な女性を演じるのって、意外と難しいのかもしれないぞ。



