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「ねぇ千夏子」

「何?」

「キスしたい」

「……き、キス!?」


祐樹くんのお店からの帰り道。

慎くんの突拍子もない言葉に、私は声を裏返らせて固まってしまう。


っていうか、似たようなやりとりを、つい最近も慎くんとした気がする。

あの時は私の了承も待たないで、勝手にされちゃったけど……!


「だってこの前はしたじゃん」

「し、したじゃんって……そもそも私は許可してないからね!?」

「えー、そうなの?」

「そうだよ! そもそもキスって、付き合ってる恋人同士がするものだからね!?」

「それじゃあ、付き合う?」

「え?」

「俺と付き合ってよ」


――慎くん、今のって本気で言ってるのかな?


表情が変わらないから、慎くんが何を考えているのか、全然分からない。

いっそ、由紀さんみたいに軽い雰囲気で話してくれたら、冗談でしょって笑って流せるのに。