「んー、今日も良い天気」
縁側からサンダルを履いて庭に下り、両手を頭上に掲げてグッと伸びをする。
空を見上げれば、どこまでも澄んだ青が広がっている。
時折、チュンチュンと小鳥のさえずりまで聞こえてくる。
想像以上に穏やかな毎日を送れていることに、ヤクザの家だからと気を張っていた分、何だか拍子抜けしてしまう。
――私、来栖千夏子が桐野江家にやってきて、今日で三日目になる。
お嫁さん候補として(といっても他の女性は辞退してしまったから、実質私一人しかいないわけだけど)桐野江家に住まわせてもらっている私は、ただで置いてもらうのも申し訳ないから、料理や掃除といった家事全般をやらせてもらうことになった。
使用人の方もいるみたいだけど、基本的には長年勤めているご年配の女性が一人いるだけで、しかも最近は腰を痛めてお休みしているらしい。
そのため組長さんの部下に当たる黒服の男性たちが家事をしていたのだという。
だけど勝手がわからず苦労していたらしく、家事をやると申し出たら、泣いて喜ばれた。
料理を作っても「まずい」「味が薄い」「俺これきらーい」などなど、跡取り候補の男子たちには散々文句を言われていたみたいだ。



