「それじゃあ、帰ろうか。千夏子ちゃんはお父さんに、まずは正直な気持ちを話してみなよ」
「正直な気持ち、ですか?」
「うん。だって千夏子ちゃんは、アメリカに行きたくないんでしょ? まだそれを伝えてないんじゃないの?」
尊さんの言葉にハッとした。
確かに私は、お父さんを責めるばかりで、自分の気持ちを全然話していなかったなって。
「……っ、千夏子!」
皆で桐野江家に帰れば、お父さんは正門前に立っていた。
私の姿を見ると、泣きそうな顔をして駆け寄ってくる。
「千夏子、さっきは怒鳴って悪かった。それに、千夏子の気持ちも考えないで勝手に決めてしまって……千夏子が父さんに愛想をつかすのも当然だよな……」
「そ、そんなに落ち込まないでよ。私こそ、さっきはごめんね。お父さん、私ね……叶うことなら、まだここにいたいんだ。お父さんと中々会えなくなるのは寂しいけど、桐野江家で過ごす毎日が、すごく楽しいの。それに、高校だって今のところで卒業したい。だから、アメリカには行きたくないの。……私だけ日本に残っちゃ、だめかな?」



