「ねぇ、千夏子」
「何?」
「キスしていい?」
「え?」
顔を上げた――次の瞬間。
唇に柔らかなものが触れた。
慎くんの綺麗な顔が、視界にドアップで飛び込んでくる。
そして、ゆっくりと離れていった。
――もしかして今、キスされた?
それを理解した瞬間、顔がぶわわっと熱を持つ。
「……い、いいなんて、私まだ言ってない!」
「だって一哉とはキスしたんでしょ?」
「そ、それは、口の端! 唇じゃないから!」
「え、そうなの?」
「そうだよ! は、はじめてだったのに……!」
「はじめてだったの? ……ふーん、そっか。俺もはじめてだから、一緒だ」
私のファーストキスを奪った慎くんは、何故だか嬉しそうに笑っている。
だけど私は涙目だ。
さっきまでの悲しい涙とは違う、恥ずかしさからくる涙。
顔が熱い。心臓が壊れちゃうんじゃないかってくらい、ドキドキうるさい。
何これ、どうしたらいいの?
慎くんの顔、まともに見れないよ……!



