――そうだ。嫌いになんて、なれるわけないんだ。
だって、どれだけムカついたって、お父さんのことが大好きって気持ちは変わらないから。
だからこそ、勝手に全部決められたことが悲しかった。
相談してほしかった。
お父さんにとったら、私はいつまでたっても頼りのない子どものままなんだって……それを実感して、悔しくなったんだ。
「っ、うん……」
「あー、また泣くし。千夏子って意外と泣き虫だよね」
慎くんは、私の涙にぬれている頬を自分の服の袖でぬぐってくれる。
……ここでハンカチを出さないところが慎くんらしいな。
そう思ったら、悲しい気持ちがほんの少しだけ和らいで、クスリと笑ってしまいそうになった。



