「千夏子のお父さん、何かすごく焦ってたみたいだけど。ケンカでもしたの?」
「ケンカっていうか……お父さんが、全部勝手に決めちゃうから」
私は、慎くんに話した。
お父さんが勝手にアメリカ行きを決めてしまったこと。それが悲しくて、モヤモヤしてしまったこと。
「ふーん、そっか」
私の話を聞いてくれた慎くんは、いつも通りの涼しい顔つきで夜空を見上げた。
その横顔はすごく整っていて、こんな時だけど、本当に綺麗な顔をしてるよなぁって、つい見惚れてしまう。
「まぁ、千夏子の気持ちはわかるよ。俺もじいちゃんに家を継げとか色々言われて、うんざりしたこともいっぱいあったしさ」
「……うん」
「でもさ、ムカついたりもするけど……本気で嫌いになんてなれないんだよね」
慎くんのその言葉が、胸にすとんと落ちてくる。



