「ねぇ。何で泣いてるの?」


やってきたのは、慎くんだった。

多分、さっきぶつかりかけたのも慎くんだろう。

それで追いかけてきてくれたのかもしれない。


慎くんは目の前までくると、私の涙にぬれた頬を自分の指先で拭ってくれる。


「千夏子、俺が呼び止めるのも無視して走っていくんだもん」

「……ごめんね」

「まぁ、それはいいけどさ。それで、何で泣いてるの?」


慎くんは顔をのぞきこんでくる。

泣き顔なんて見られたくないのに……慎くんにはそういう乙女心が分からないみたいだ。


「……こういう時は、気づかない振りをする男の子の方がモテると思うよ」

「えー、俺そういうの分かんないし。っていうかモテるとかモテないとか、興味ない。そんなことより、千夏子が泣いてる理由が気になる」


私の手を握ってきた慎くんに、近くのベンチまで誘導される。

慎くんが座ったので、私も隣に腰を下ろした。