「くっだらねぇ。俺はやらねぇからな」
「俺もー。面倒だからパスで…「勝った奴には、負けた奴らが一人十万ずつ払うってのでどうよ?」
一哉に続けて不参加を告げる慎だったが、それを遮るようにして告げられた由紀の言葉に、目の色が変わった。
「その話、乗った」
慎は気だるげそうにしていた瞳に微かな生気を宿して、むくりと起き上がる。
「ちょうど欲しいゲームがあるんだよね。今度発売するアニメの豪華版ブルーレイも買いたいし」
「んじゃあ、決まりな。もちろん尊も参加するだろ?」
「んー、まぁ最近は退屈してたし、暇潰しにはちょうどいいかもね」
「ま、もって一か月ってところだろ」
尊に続けて、玲も乗り気な様子で言う。
「チッ、勝手にやってろ」
こういったことに興味がない一哉は、不快そうに舌打ちをして、先に部屋を出ていってしまう。
――こうして、千夏子の知らぬところで、“誰が千夏子を落とせるか”という賭けが始まったのだった。



