「オレは、啓治さんと千夏子さん二人が決めたことなら、何も言わんさ。千夏子さんはこの一か月半、よく働いてくれたからな。まぁ千夏子さんがいなくなると、寂しくはなるがなぁ」
「いえ、私は全然……」
食事を用意したり掃除をしたり、ただ家事をこなしていただけだ。
していたこと自体は、お父さんと二人で生活していた時とそこまで大差がない。
だけど衣食住を与えてもらって、高校にも通わせてもらって……組長さんには、借金だけじゃなく、返しても返しきれない恩ができたと思う。
「辰寿さん。借金のことも千夏子のことも、改めて本当にありがとうございました。このご恩は一生かけて返していきます」
「いいんだ、困った時はお互いさまだっていうからなぁ。だから顔を上げな。父親のそんな姿見たら、千夏子ちゃんも困っちまうだろ」
土下座をする勢いで深々と頭を下げていたお父さんは、顔を上げて私に向き直る。



