「千夏子!」

「え、どうしてここにいるの? 今は県外に出稼ぎに行ってたんじゃ……」

「今朝、田口から電話があったんだ。借金の返済は終わっていると言ったら、千夏子に話を聞くって言いだすから、慌てて飛んできたんだよ。電話しても全然つながらないから、心配してたんだぞ。……本当に、無事でよかった」


私を痛いくらいの力で抱きしめたお父さんの声は、震えている。

すごく心配をかけてしまったみたいだ。


「つーか誰? あのおっさん」

「千夏子ちゃんのお父さんだと思うよ。千夏子ちゃんがくる前日に、ウチで組長と話している姿を見たことがあるからね」

「あー確かに、どことなく目元とか、千夏子ちゃんと似てる気がしなくもねぇかも?」


そんな由紀さんと尊さんの会話が聞こえてくる。

桐野江家男子たちにも、あとで改めて、お父さんのことを紹介させてもらおう。


悠長にもそんなことを考えていたけど、顔を上げたお父さんに告げられた言葉に、私は驚いて目を瞠ってしまった。


「千夏子。父さんと一緒に、アメリカに行こう」

「……え?」


――アメリカって、どういうこと?