「千夏子ちゃん家ってさぁ、莫大な借金があるんだろ? 全然知らなかったわ」
「お前の所帯じみたところは、その借金のせいでもあったんだな」
「いやぁ、それ千夏子ちゃん本来の性格なんじゃねーの?」
「……まぁ、確かに」
由紀さんと一哉くんは、殴りかかってくる男たちの相手をしながらも、余裕そうな表情で私に話しかけてくる。
「俺も、千夏子さんがそんな大変な思いをしていただなんて、全然知りませんでした……。これからは何かあったら、いつでも頼ってくださいね」
「うん、ありがとう玲くん。でもね……その右手は、一旦下ろしてもらって大丈夫だからね?」
玲くんは辛そうな顔をしているけど、左手で男性の胸倉をつかんだまま、右拳を振り上げている。
そのギャップに、脳がバグを起こしそうだ。
――玲くんって、意外に暴力的な一面もあるんだな……。
ちょっと驚きながらも、そういえば借金のことは、尊さんと慎くんにしか伝えていなかったことを思いだした。
あとで皆にも、ちゃんと説明させてもらおう。



