***
屋敷内を案内してもらうために千夏子がいなくなり、組長も退室し、部屋には跡取り候補の男たち五人のみが残った。
「千夏子ちゃんだっけ、ウケるわぁ。ああいうクソ真面目そうなタイプを相手にすんの、はじめてかも」
「あの女、頭湧いてんじゃねえのか?」
由紀に続いて、玲は眉根を寄せて悪態を吐く。
「まぁ、俺たちと対面してもビビるどころか、意味不明なこと言ってきやがったし……変な女であることに違いはねーだろ。つーか慎は、いい加減起きろよ」
一哉が頭を軽く叩けば、熟睡していた慎はもぞもぞと身動ぎする。
「いった……何。せっかく気持ちよく寝てたのにさぁ」
「何じゃねーよ。お前、ろくに話も聞いてなかっただろ」
「あー、いいよ。女はもちろん、組長の座とかも、俺は全く興味ないから。パース」
慎はふぁぁっと欠伸を漏らしながら、また机に突っ伏す。



