「オマエら、少し落ち着け」


桐野江組若頭の杉下雄二だ。

杉下の登場に、鈴木は固くしていた表情を安堵からほんの僅かにやわらげる。


「杉下は、千夏子が攫われた時一緒にいたわけ?」


慎が尋ねる。

杉下は首を横に振った。


「いや、俺は一緒にいたわけじゃねぇ。コイツから連絡を受けたんだ。だが、犯人が誰かの目星は大体ついてる」

「どうせ桐野江組を恨んでる奴らの犯行だろ?」


玲が苛ただし気に言うが、杉下はそれにも異を唱える。


「いや、ちげぇ。犯人は――」


杉下の口から告げられた真実に、桐野江家男子たちは驚いたように目を瞠った。