「べ、別にあれは、事故で……」

「そうそう、唇にしたわけじゃないんだもんね。千夏子ちゃんはそんなに気にしてないみたいだったけど、一応ちゃんと謝っておいたほうがいいんじゃない?」

「うっ……分かってる」


尊からの指摘に、思うところがあった一哉は素直にうなずいた。

あの後、ろくに謝ることもできずにそのまま話せていないことを、ずっと気にしていたのだ。


「なぁ。千夏子ちゃんがきて一か月は経ったわけだけど、千夏子ちゃんのこと、どう思ってんの? つーか千夏子ちゃんを落とせそうなやつ、いる?」


話を切り出した由紀は、一人ひとりの顔を見渡しながら言葉を続ける。


「千夏子ちゃんって、一緒にいて飽きねぇよな。俺、結構マジになっちゃったかも」

「マジってどういうことだよ」

「ん~? そのままの意味だけど?」


一哉から尋ねられた由紀は、はぐらかすような笑みを浮かべる。

由紀の本心をはかりかねている一哉は、千夏子が由紀に泣かされている未来を想像して、眉をしかめる。