「まぁとりあえず、千夏子さんは今日からこの家に住むことになるんだ。まずは屋敷を案内しねぇとな。おい、杉下」
「へい、オヤジ」
組長さんの声に、障子戸の向こうの廊下に控えていたらしい、めちゃくちゃ顔の恐い男性が入室してきた。
……え、本当に怖い。
眼光があまりにも鋭すぎて、目が合った瞬間に物理的に殺られてしまいそうだ。
「コイツはウチの若頭だ。何か困ったことがありゃ、いつでも相談しな」
「よろしくな」
「は、はい……」
(え、私今からこの人に屋敷を案内してもらうんだよね。二人きりで……?)
先に部屋を出ていってしまった杉下さんの後を追いかけながら、チラリと後ろに目を向けてみる。
だけど、こちらを見ていた一色さんや美波さんにはひらひらと手を振られてしまったので、私は肩を落としながらも覚悟を決めて、一人で杉下さんの後に続いたのだった。



