「よく眠れるおまじない」


すぐ目の前にあった尊さんの顔が、ゆっくりと離れていく。


――どうやら、おでこにキスされたらしい。


それを理解した瞬間、顔が一気に熱をもつ。


「おっ……、おやすみなさい!」


私は全速力の早歩きで部屋まで戻って、布団にもぐり込んだ。

尊さんは“よく眠れるおまじない”なんて言っていたけど――さっきの感触を思い出しては恥ずかしさがこみ上げてきて、余計に眠れなくなってしまった。